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人の輪を大切に… 子どもも大人もみんなが安心して暮らせる場所づくりをサポート。

静岡市清水区に子どもの居場所『かっぱらぱ編集室』を開き、現在は小・中学校でスクールカウンセラーとしても活躍されている川島さん。自身の3人の子育てのかたわら、数々の資格を取得し、現在のお仕事に活かされている姿は、女性の生き方の一例を示してくれています。今回はこれまでの活動経緯と今後の展望についてお話を伺ってきました。

取材日2016年8月4日

PROFILE

北海道室蘭市生まれ、静岡市清水区在住。 1998年静岡市清水区興津に子どもの居場所『かっぱらぱ編集室』を始める。現在は、NPO法人かっぱらぱ編集室の運営を続けるとともに、静岡市スクールカウンセラーとして県内の小・中学校に勤務している。学校や地域などでカウンセリングや講座・講演の活動を展開している。
〈資格〉
認定カウンセラー(日本カウンセリング学会認定)
家族相談士(家族心理士・家族相談士資格認定機構認定)
交流分析士インストラクター(日本交流分析士協会認定)
特別支援教育士(特別支援教育士資格認定協会認定)
ガイダンスカウンセラー(スクールカウンセリング推進協議会認定)

子どもたちの心身の健やかな成長を願う。

NPO法人『かっぱらぱ編集室』ではどのような活動をされていますか?

子どもたちが健やかに育っていけるような居場所や環境づくり・人材育成事業を3つの柱でサポートしています。

まず、子どものコミュニケーションと体験の場として一日児童館『かっぱら広場』の企画・運営を行っています。2002年から毎月1回、興津県営団地集会場で10~16時まで開催しています。子どもたちが参加しやすいように、午前中は小さな企画を用意しています。例えば、好きな絵を描いてしおりを作ったり、割りばし鉄砲作りをしたり。お昼も一緒に食べて、一日のんびり遊んでいます。人に迷惑をかけると叱ったりもしますが、企画に参加するも、しないも、子どもに任せ、自由に過ごせるように工夫しています。

二つ目は、お母さんのための子育てプチ心理学講座です。今のお母さんたちは、公園や子育て広場に行っても他の人たちと上手にコミュニケーションがとれず悩んでいる方が多いと聞きます。2006年から子育て中のお母さんの居場所と学びの場として、プチ心理学講座を始めました。様々な地域で開催され、たくさんのお母さんたちが参加してくれています。

三つ目は、2014年から始めた、子どもと関わる人のための実践心理学講座です。私は小・中学校でスクールカウンセラーとして働いているのですが、学校での支援者の立ち位置、学校の先生や保護者との関係など、教育現場のいろいろな問題を感じています。この講座は、支援者としての学びと、お互いの情報交換の場にもなっており、リラックスしながら必要な知識を学ぶことができます。

※『かっぱらぱ編集室』とは、Kids(子どもたち)の頭文字Kは、ギリシャ語で『Kappa』(かっぱ)。
それに、おしゃべりの意味の『rap』と、交流を意味するAssociationの頭文字『a』を付けて、『かっぱらぱ』(Kapparapa)=子どもたちのおしゃべり交流会。
それを発信する場所だから『編集室』を付けて『かっぱらぱ編集室』。

地域に子どもたちが安心して過ごせる居場所を作りたい!

子どもの居場所作りを始めたいきさつを教えてください。

私には3人の息子がいて、子育て中、子ども同士のトラブルで学校から一方的に責められるという、苦い経験をしました。子どもを見守るのは学校と家庭だけではなく、地域も一緒になって子どもたちをみたら良いのに…と思いました。子どもたちの側にいられる人に自分がなろうと、子どもの居場所『かっぱらぱ編集室』を約18年前自宅で始めました。

毎週火曜日の5時~6時半。はじめの60分(後に45分)は勉強、あとは遊びの時間としました。最初は3人の息子と友人1人の4人で始まったものの、子ども同士の口コミで半年後には20人近くに増え、自宅では手狭になったため、当時の団地の会長さんのご厚意もあり、場所を団地内の集会場に移しました。

実際、継続していくにはお金も必要で、預けているお母さんからの要望も重なり、おやつ代も含め毎月500円を集金するようにしました。助成金の申請も通り、その資金をもとに集会場の机などの備品を購入したりしました。子ども向けの新聞を年4回発行し、『かっぱらぱ編集室』に来ている子どもたちは「かっぱらぱ子ども編集員」として紙面に協力しました。この新聞には子どもたちのつぶやきや四コママンガを掲載し、小学校でも配布の協力をしていただきました。

『かっぱらぱ編集室』では基本本人次第。勉強がわからないと学校がつまらなくなるので、勉強はまずやらせたかったですが、家で宿題をやってきた子はのんびり過ごしていました。後の遊ぶ時間でもみんなで同じ遊びをするのではなく、その子が自由にやりたいことをやれば良いよというスタンスでいました。子どもたちは学校や家でやらなければならないことに追われています。安心して自分の時間を過ごしたい、そんな子どもたちが『かっぱらぱ編集室』に集まってきていたのでしょうね。

遊ぶ時間に何をするのか、当初は私が企画していました。「卵シリーズ」をやった時は、週替わりで「ゆで卵→目玉焼き→スクランブルエッグ→卵焼き」を作りました。中には卵を割らずに持って来られない子もいて、自宅から割れやすい卵を持って来るだけでも、子どもにとっては良い経験になるのだと発見がありました。体験の遊びのほか、ハンカチ落としやドッジボールも人気でした。

始めた当初は経験も知識もなかったのですが、子どもを預かる側の責任と、預ける側のお母さんからの要望を感じ、心理学の勉強をして、様々な資格を取得していきました。

初めの頃は、みんなで川や海に行ったり、ディスカバリーパーク焼津や富士こどもの国に出かけたりしましたが、外へ出かけていくと参加する人が限られてしまうことと、2002年学校の完全週休二日制の導入に伴い、土日の子どもたちの居場所を作りたいと思い、月一回の一日児童館『かっぱら広場』を集会場で開催するようにしました。この活動は現在も継続しています。

土曜日の一日、子どもたちはのんびり、自由に遊びます。自宅ではすぐにおもちゃを片付けるよう言われてしまい、ゲームなど簡単な遊びに特化してしまう子どもたちが気がねなしに遊べるように、おもちゃは終わりの時間まで片付けないようにしています。誰かが作ったものを別の誰かがまた遊ぶ。昔、近所で基地作りをして、また次の日その続きを作って…という『かっぱら広場』は屋根のある外遊びのような感覚を持てる場所です。

午前は何か企画をして、お昼をみんなで食べて、午後はゆっくり自由に過ごしています。小さな子どもを連れたお母さんたちも来てくれて、年間300~400人位参加していると思います。

今は主なスタッフ3名でやっていますが、とても仲良しで、本当に楽しくやっています。

一人の方は子育ても一緒にしてきた同世代の女性で、もう一人は60代の女性で、活動を手伝いたい、と『かっぱらぱ編集室』を「生きがい」のように思ってくれています。チラシを配ったり、広場のお昼を作ったり、それぞれが役割をこなし、楽しいと思える大人の関係があります。

時代と環境の変化に対応しながらの活動

これまでの活動の中で苦労されたことはありますか?

地域の方の活動の理解が得られなったときは大変でした。団地という場所で、補助金をいただいて活動していた時期は、誤解されている人からのバッシングもありました。毎週活動する『かっぱらぱ編集室』は参加している子どもからの集金で賄い、月一回の『かっぱら広場』には補助金を充てていたのですが、ただ遊んでいるだけの活動にお金を取られている感覚があったのだと思います。いろいろ苦情があったのですが、子どもを預けてくださっているお母さんたちや、地域の理解ある人たちの助けがあって継続できています。現在活動を支える資金は、賛助会員(個人一口\1,000、団体一口\3,000)という形をとっています。高齢者の方からも活動の支援をいただき、有難く思います。

毎週活動していた『かっぱらぱ編集室』は、参加する子どもたちの数が減ってきたことなどの現状を鑑み、閉鎖することにしました。

長く子どもたちに関わってきて、携帯ゲームが普及してきてから子どもたち同士の関係が希薄になってきていると感じます。『かっぱらぱ編集室』の最後の方では、そういった子どもたちの姿を目にしました。祭りで何かお店を出すにしても、昔なら高学年の子が低学年の子と一緒になって1つのことをやることに何の問題もなかったのが、今の子たちはそうはいきません。例えば低学年の女子が「3人だけで何かやりたい」と言い、他のグループの子とやることを拒否することもありました。

また、学校では先生に叱られないように、家庭ではお母さんに叱られないように、とストレスをためてしまう子どもたちが、学童保育の場などでそのストレス発散し、問題を起こすという事態が起きており、似たような事態が『かっぱらぱ編集室』でもありました。もちろん、問題なく過ごす子も多かったのですが、以前に比べ大変になってきたという実感がありました。

子どもの居場所作りは、いろいろとわからない中で始めたことでしたが、パワーだけはあり、試行錯誤しながらやってきました。しなくても良い苦労もたくさんしてきたので、後に続く方が少しでも楽に運営していけるようにと、子どもの居場所の作り方ノウハウ本『かっぱらぱ編集室はいつもにぎやか~こどもの居場所の作り方~』を「平成22年度育ててよし!ふじのくに民間チャレンジ応援事業」の補助金により発行させていただきました。

子どもたちの明るい未来のために次世代を育てる。

今後の取り組みなど、お聞かせください。

夏休みの間、東海大学海洋博物館でスタッフとして来館者と接しています。学生スタッフもいるのですが、彼らにもいろいろ悩みがあって、そういう時にはちょっと言葉をかけたりして、学生たちの成長が見られるのもうれしいです。海の生き物に触れるコーナーなどで、親子連れに対してどういう言葉がけをしたら良いのかというのは、長年の経験からわかるので、気持ちよく過ごせるよう配慮しています。

自分が関われる子どもの数は限られていますし、直接自分が子どもに関わるには年が離れてきているという実感もあります。『かっぱら広場』で今の子どもたちの様子やニーズを、学校のカウンセラーの仕事で学校の実情を、そして地域で生活しているのでその地域の状況を把握しています。それらを強みに子どもたちを支えている人が安心して動けるようにサポートしていくのが私の役割だと思います。

今後は子どもたちに関わる人、家族、学校関係者、支援者などの周りの人たちの教育活動に力を入れていくことで、子どもたちが安心して過ごせる場所が増えていくといいな、と考えています。

活動を通して、私たちは、子どもたちからいろいろなことを学ばせてもらい、エネルギーをもらっているな、と感じています。決して子どものためだけにやっているのではないと。そういう自覚がないと、押しつけになってしまい、もっとこうして欲しいなど大人が主体になってしまうと思います。

今の子どもたちは体験が乏しいと言われていますが、子どもたちが安心して体験できる場所、見守ってくれる大人がいて失敗して良い場所を増やしたいです。例えば、水族館とタイアップして実体験のできる「海の学校」のようなものを作ってみたいですね。

そして、子どもたちだけではなく、子育てしているお母さんにも、大人に対しても、やさしい目で見守る人たちがいる地域が理想です。地域で子どもの居場所を作ることは、対子どものように見えるけれど、やはりそれだけではなくて、子どもたちが安心してそこにいられる大人の関係を作っていくこと、それがとても大事だと思います。

川島 多美子さんのパワーの源


  • 子どもの笑顔、人との関わり
    子どもたちから教えてもらい、エネルギーをもらっています。楽しいと思える大人同士の関係があります。


  • テレビや新聞、本など、マスメディアの言葉
    頑張っている人(特に60歳過ぎてから)のコメントや生き方は励みになっています。


  • ご両親の生き方
    80歳を過ぎてもなお現役で頑張っている姿にはパワーをもらっています。どう生きていくかの道標です。

インタビューを終えて

私が川島先生と出会ったのは心理学講座でしたが、今回のインタビューでは、その時の先生とは全く違った感じで、言葉を選び、時には思いを巡らせ、いろいろなことをお話ししてくださいました。
『かっぱらぱ編集室』という、ユニークなネーミングにも川島さんの思いが詰まっています。過渡期にあると感じている川島さんの今思うあれこれ、人生観など、とても参考になりました。子どもにとって居心地の良いところは、大人も同じで、自然と人は集まってきます。みんなが心穏やかに過ごせるような様々な活動と今後の活躍に期待しています!

NPO法人 かっぱらぱ編集室のインフォメーションはこちらから

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