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言葉の大切さ、日本語の美しさ、
表現することの楽しさを伝えたい!

5歳で子役デビューを果たし、現在は地元静岡を拠点にフリーアナウンサーとして活躍されている杉山直さん。「同じ所にじっとしていられない」という直さんの新たなる挑戦についてお話をうかがいました。
役者経験とアナウンサー経験を融合させた、まったく新しい舞台芸術「新朗読」とは?!直さん演じる「家康公」の舞台裏エピソードも必見。

取材日2015年11月18日

新朗読 2010年 「走れメロス」

PROFILE

1957年生まれ。静岡県静岡市出身。
5歳で子役として劇団文化座「土」で全国公演デビュー。その後、テレビドラマなどに多数出演。22歳より静岡に拠点を移し、フリーアナウンサーとして活動。平成19年「新朗読」を発表。現在、ジュビロ磐田スタジアム専属DJとして活躍中。

しっかり「聞かせ」たい!文庫本33頁を全文暗記

現在の活動内容を教えてください。

フリーアナウンサーとして活動しています。ジュビロ磐田のスタジアムDJを中心に、イベントや披露宴の司会、CMのナレーションなどの仕事をしています。

それらに加えて、僕が50歳になったときに始めたのが「新朗読」です。今から8年半前、50歳を節目に「何か新しいことを始めなきゃ」って。同じ所にじっとしていられない性格なので(笑)。今までやってきたことを活かして、当時流行っていた「朗読」に挑戦してみようと思ったんです。

いろんな方の朗読会を聞きに行きました。でも、正直、あまり面白くなかった…。というのも、僕に語りかけてきてくれていないんです。「読み聞かせ」と言いつつも、読んでいるだけで、聞かせていないんですね。

自分がやるんだったら、しっかり聞かせられるものにしたい。そのためには、読んでいてはダメだと。公演日までの3ヵ月間で全文を暗記しました。

ジュビロ磐田 ヤマハスタジアムにて。DJとして会場を盛り上げる直さん。 / テレビ番組「いい伊豆見つけた」に出演。川端康成「伊豆の踊子」を詠む。

全文暗記!?どれくらいのボリュームですか?

初演の「桜の花の満開の下」(坂口安吾)は文庫本33ページ、1時間55分の作品でした。全文暗記してしまえば、音楽や映像、照明とともに表現豊かに朗読することができます。

また、子役時代からの役者経験に加え、アナウンサーとしての経験がある自分なら、朗読に演技の要素を加えた、まったく新しいスタイルの舞台芸術ができると確信しました。

新朗読 2015年 滋賀県大津市での公演「ヤマトタケルノミコトと熱田神宮」

敷居の高い文学作品も、直さんの「新朗読」をきっかけに「読んでみよう」
という気持ちになれそうですね。

「◯◯という作品はこういうストーリーだったんだ」と知ってもらうきっかけになればいいなあと思っています。そして、最終的には「本を読む」ことに落とし込みたい。インターネットやゲームなど、興味の対象がたくさんある今こそ、こんなに素晴らしい文学作品があることを、多くの人たち、とくに子どもたちに知ってほしい。そのためには、普通に読んで聞かせるのではなく、ユニークな手法でアプローチしていくことが必要だと思うんです。

さらに、記されている言葉通りに伝えることが大切だと考えています。今風の言葉に換えてしまうと、その時々の言葉の良さが失われてしまう…。太宰治や宮沢賢治が紡ぎ出した言葉があります。それが、今の人に通じなかったとしても、通じるように創意工夫して伝えるのが、僕の役割だと思っています。

新朗読 2014年 富士市交流プラザでの公演「セロ弾きのゴーシュ」富士フィルハーモニー管弦楽団と共演

小学校でも数多く公演されていますよね。

「これだけ表現してもいいんだよ」という表現することの面白さや楽しさを伝えたいです。今の子どもたちは、デジタルコミュニケーションに頼ってしまっています。嬉しいときには嬉しい、悲しいときには悲しいと、きちんと伝えられるようになってほしい。

「新朗読」を通じて、言葉の大切さ、日本語の美しさ、表現することの楽しさを、ぜひとも伝えていきたいですね。

静岡県内を中心に学校でも多数公演。

60歳を目前に、もっと荒れた道があるはずだと…。

現在、役者としても活動されているとお聞きしました。

20代はライブハウス経営、30代はタレント活動、40代はウエディングプランナー、50代は新朗読に挑戦。そして、60歳を目前にした今、まだやりたりないことがあるなと思って…。何かもっと荒れた道があるはずだと(笑)。

そんなとき、僕がパーソナリティーを務めるラジオ番組で、徳川家康公顕四百年記念事業市民参画事業として公演される「徳川家康公と朝鮮通信使」のオーディションのプレスリリースが送られてきて。運命的なものを感じました。市民劇団だから出演料が出ないのも承知の上で、受けてみたいなって思ったんです。

慣れない「武士歩き」に苦労している直さん。

見事オーディションに合格し、演出家の松尾交子先生のもと、稽古も大変だったとか。
舞台裏のエピソードを教えてください。

セリフを覚えることや声を出すこと、表現することには、正直、自信があったんです。ところが、その自信は、稽古初日にもろくも崩れました。歩けないんです。「武士歩き」ができない…。

どんなに素晴らしい演技ができても、舞台に上がってこられなければ、意味がありません。ちょっとした所作や姿勢ひとつとってもダメだしされる。苦闘の日々が始まるわけです。

最近は、若い頃に比べて指摘をされることが少なくなりましたが、この役を通じて、一から学ばせてもらいました。

演劇「徳川家康公と朝鮮通信使」の予告パフォーマンス。

静岡を拠点に、全国各地を飛び回っていたい!

これからの夢を教えてください。

2つだけ思っていることがあって。ひとつは、還暦の歳になったら、静岡から全国に向けて文化を発信すること。もうひとつは、いつでも公演できる小屋を持つこと。全国各地を飛び回り、静岡に戻って来たら、その小屋で公演している…そんなイメージです。

あとは、自分の「児童劇団」をつくりたい。僕の原点でもありますから。こうした夢のひとつひとつは、すべて線でつながっているような気がしますね。

座右の銘はありますか?

「自分の人生は、自分の思い描いた通りになる(ジョセフ・マーフィー)」です。言い換えると「自分の人生は、思い描いた通りにしかならない」となるわけです。思い描き、口にすることで、実現していきたいですね。

直さんのパワーの源

  • 甘味

    甘いものが大好きです。甘いものは脳に元気を与えてくれるとか。朝から大福とか食べちゃうんですよ(笑)。なかでもおすすめは、藤枝市にある神谷製餡所の「たい焼き」です。工場の一角でたい焼きを売っているんですが、たいの口が開いちゃうくらい、餡がぎっしり詰まっています。そのボリュームで1個100円なんですよ。これはおすすめです!

    ●神谷製餡所(藤枝市観光ガイドより)
    http://www.fujieda.gr.jp/contents/NOD110/428872.html

  • 温泉

    温泉が好きです。時間を見つけては日帰り温泉を愛用しています。おすすめは、島田市の「伊太和里の湯」です。お湯に浸かりながらボーッとしていると癒されますね。

    ●伊太和里の湯(島田市公式HPより)
    http://www.city.shimada.shizuoka.jp/onsen/itawarinoyu.html

インタビューを終えて

20代、30代、40代…と10年ごとに、自分自身に新たな課題を課している直さん。「もっと荒れた道があるんじゃないか」と、年齢を重ねれば重なるほど、自分への要求レベルが高くなっていくような…。それって、自分をよく知り、自分に謙虚でなければできないことかなあと思われました。

私もそんな年齢の重ね方をしたい!迷える40代の大人すぎる女子ですが、新たな一歩を踏み出す元気と勇気をもらいました。直さん、ありがとうございました。