SPAC-ENFANTS(スパカンファン)・プロジェクト― 新作ダンス 『ANGELS』経過発表の初公演を終えて
静岡の中高生とともに新しい舞台を創造する、SPACによる国際共同製作プロジェクトSPAC-ENFANTS(スパカンファン)。前回の特集では公演前の稽古にお邪魔して、高校生のメンバー2名にインタビューしました。
そして8月末、新作ダンス『ANGELS』のワーク・イン・プログレス(経過発表)の公演を開催。今回は、初日公演終了直後に同じ高校生2名にインタビューを行い、公演の感想や今後について取材しました。
スパカンファン・プロジェクト第2弾
『ANGELS』参加メンバー
吉田 燦さん
永田 茉彩さん
SPAC-ENFANTS※(スパカンファン)は、オーディションで選ばれた静岡の中高生とともに新しい舞台を創造する、SPACによる国際共同製作プロジェクト。フランスを拠点に国際的な活動を展開する振付家・ダンサーのメルラン・ニヤカム氏を迎え、2010年にスタート。「世界中の子どもたちが未来への希望を取り戻すことができるダンス」をコンセプトに、芸術表現として世界に通用するクオリティーを持ったダンス作品を目指しています。
※ENFANTS=フランス語で「子どもたち」の意味
詳しい公演情報はこちら
http://spac.or.jp/angels_201508.html
仲間と団結して挑んだ初公演
今回のスパカンファン・プロジェクトには個性の強いメンバーが集まったので、短い稽古期間でまとまるかどうか心配でしたが、稽古~公演を通してお互いに協力し合うことができ、舞台が成功したと思います。前回参加した『タカセの夢』はプロジェクトの2期で作品が出来上がっていましたが、新作『ANGELS』はゼロからのスタートで、身近な動きを取り入れたりして、みんなで創り上げた作品となりました。今日は初日で本番はとても緊張しましたが、その緊張感を楽しみながら頑張れました。今日の公演はお客さんにも満足してもらえたのでは、と思います。(吉田さん)
今日は初公演ということで、すごく緊張しましたが、ニヤカムさんや先輩のメンバーの人たちの言葉を頭で確認しながら、自分なりに力を出し切ることができました。
稽古していた時、驚いたのは『ANGELS』のチケットが発売日の午前中で売り切れてしまったことでした。まだ稽古も途中段階でどうなっていくかわからない状況だったので、スパカンファン・プロジェクトに対するみなさんの期待を考えると、プレッシャーを感じていました。完売の件があって、気合が入り、メンバーも集中して稽古に取り組むようになったと感じました。スパカンファン・プロジェクト『ANGELS』は、新しいメンバーで公演を通してまとまることができたと思います。(永田さん)
舞台を通して少しずつ変化
稽古~公演を通して私が意識してきたことは、「舞台にはお客さんがお金を払って見に来てくれる。だから、お客さんが舞台を楽しんで、満足して帰ってもらいたい」ということです。私はメンバー最年長の高校2年生なので、みんなをまとめなければっ、という気持がありましたが、稽古を重ねて公演が近づくにつれ、みんなが協力してくれてとてもありがたかったです。稽古や舞台を経験して、メンバーみんなが仲間として団結力がついてきたと感じました。(吉田さん)
私は小さい頃から歌うことが大好きで、歌は自分の持ち味として大切にしています。
ただ以前は、上手に歌いたいとか、上手に見せたい、という思いが強かったのですが、稽古中のニヤカムさんの言葉で、歌に対する姿勢が変わりました。「赤とんぼ」を歌う場面でニヤカムさんから「CDなどを聴いて真似するのではなく、『赤とんぼ~茉彩バージョン~』で良いんだよ」と指導されました。今回の舞台ではその場面のキャラクターの立場で、感じたことを表現して歌うことができたと思います。(永田さん)
この経験を活かして更なる成長を
8月の公演が終わり、しばらくスパカンファンの稽古を毎日するということはなくなりますが、その間も自分で特技に向き合って、良いところをもっと伸ばしていきたいです。メンバー14名、それぞれ個性があるので、お互いにその個性を尊重できたら良いと思います。また、相手の良いところを認めるだけではなく、自分もその良い部分を吸収していきたいです。そして、メンバー各自のレベルを上げて、来年の公演に備えられたらと思います。来年の公演の最後にみんなで「良かったね」と、笑い合えるように頑張りたいです。(永田さん)
スパカンファンを観に来ていただいたお客さんにはその方の知合いの方にもスパカンファンのことを伝えてもらえたらうれしいです。今後は県内だけではなく、県外でもスパカンファンの知名度がもっと上がってほしいです。
私は高校2年生なので、そろそろ将来のことも考えないといけないと思います。こういう舞台に立たせていただいているので、この経験を活かせる職業に就きたいと考えています。
踊りや舞台とかが好きなので、そういう方向に進んでいけたらと思います。(吉田さん)
編集部コメント
2015年8月末、舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」で開催された『ANGELS』の公演。チケット発売から即完売で、1公演追加開催されました。それ程、注目されていたスパカンファンの舞台。おそらくプレッシャーもあったことでしょう。けれど、舞台での彼・彼女たちはとてもかっこ良くて、エネルギーに満ち溢れていました。バオバブの樹の幻想的な舞台。絵本がめくられるように展開していくストーリー。音楽やダンスも、日本的なものからアフリカンや欧米的なものまで多様に繰り広げられ、スパカンファン・メンバーが創り出す世界を思う存分堪能できました。
今回の吉田さんや永田さんのように、真っ直ぐ自分の好きなことに向き合い、じっくり取り組む中高生達に出会い、静岡にこんな若者がいるのだ、と正直うれしく思いました。スパカンファンを通じて、縦横のつながりを感じ、得難い経験をし、彼らは今後も大きく羽ばたいでいくことでしょう。振付アシスタントの木野彩子さんの言葉を拝借するなら、公演を成功させたメンバー達は本当に満開のひまわりのようにキラキラしていました。
今回の公演がワーク・イン・プログレス(途中経過)で、来年は集大成の舞台が控えています。成長著しい中高生のメンバーですから、来年の公演ではパワーアップした姿を見せてくれるでしょう。公演が終わったそばから欲張りですが、次も期待したくなってしまう。そんな素敵な公演でした。スパカンファン・プロジェクト、新作『ANGELS』。今期も目が離せません。